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Channel: 仙石浩明の日記
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香港で洗濯を

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旅行期間が長くなると当然着替えがたくさん必要になる。 下着を毎日替えるのはアタリマエだが、 シャツもできれば毎日着替えたい。 滞在期間が一週間を超えると、 衣類だけでスーツケースが一杯になってしまう。 近年多くの航空会社が、 荷物を各 50ポンド (約 23kg) 2個までに制限するようになったので、 持って行く衣類は 5日分くらいに抑えて、 現地で洗濯して着まわすようにしたい。

米国など多くの国では、 ホテル内 (あるいはホテルの至近) にコインランドリーがあるので、 数日毎に洗濯していたのだが、 香港ではコインランドリーを見かけたことがなかった。 いつも利用しているホテルにコインランドリーが無いだけでなく、 香港じゅうどこへ行ってもコインランドリーらしきものが見当たらない。 香港に長期滞在している人達は、 いったい洗濯物をどうしているんだろう? と思っていた。

新明亮 專業乾洗 New Bright & Light Laundromat

← ただ、 ホテルの前にクリーニング店らしきものがあることには以前から気付いていた。 店内にはカウンターがあって、 店番のおばちゃんが一人座っている。 ドライクリーニング済と思しき、 一着一着ハンガーに掛けられ透明袋で覆われた衣服が、 ところ狭しと上から多数吊り下げられている。 いくら香港の物価が安いといっても、 下着を含めて全てドライクリーニングするわけにもいかないよなぁ、 と思っていた。

この店の看板には 「新明亮 專業乾洗」 と漢字の店名の他に、 「New Bright & Light Laundromat」 と英語の店名が併記してある。 Laundromat (Laundry + Automatic の造語) は、 米国だと 「コインランドリー」 の意味なのだけれど、 お客が洗濯機を直接いじれる状況ではなく、 コインランドリーとはかけはなれた感じ。 どーみても (日本の街角で見かける) クリーニング店である。

店名にある 「乾洗」 は文字通り 「ドライクリーニング」 の意味だが、 店のガラスに貼ってある掲示をよく見てみると、 「乾洗」 の価格表の他に、 「磅洗 1-7磅 $31.5 (毎磅+$4.5)」 などと書いてある。 「」 は 「ポンド」 の意味で、 7 ポンド (約 3.2kg) までは HK$31.5 (約 315円) で、 1 ポンド増えるごとに HK$4.5 (45円) 増しという意味。 これは洗濯物を量り洗いしてくれるという意味ではなかろうか? ちなみに、 料金が妙に中途半端な数字なのは、 「磅洗九折」 つまり 10% 割引のため。 元の値段は、 HK$35 毎磅+HK$5 だったのだろう。

英語が (中国語と共に) 公用語である香港ではあるが、 個人商店だと英語が通じる可能性は低い (最も通用するのは中国語の一方言である広東語)。 おばちゃんに、 量り洗いを、 どんな仕上がりでやってくれるのか英語で尋ねても、 たぶんこちらの意図は通じないだろう。 意を決して、 洗濯物の袋を持ち込んでみた (12/19)。

もちろん、 最悪の事態を想定して、 なくなっても (あるいはズタボロにされても) そんなに困らない下着やシャツに限定してビニール袋に詰め込んで持ち込む。 ホテルのロビー前を、 下着満載の袋を持って通り過ぎるのはちょっと恥ずかしい。

11磅 HK$50 と書かれたレシート

袋を持って店に入ると、 店番のおばちゃんが入口わきの秤を指し示した。 よかった、 少なくともここまでは、 こちらの意図が通じている。 秤に乗せると 11ポンド (約5kg) だった。 おばちゃんが 「ん、さっぷまん」 と言った (のだと思う)。 こんな単純な単語でも、 なかなか聞き取れない。 広東語は 「ん」 で始まる発音が重要なのだけど、 あいにく日本語には 「ん」 から始まる語がないので、 日本人にとって 「ん」 から始まる単語を聞き取るのは難しいし、 発音するのも難しい (広東語で 「しりとり」 をしたら 「ん」 で終わる単語を禁止しなくていいかも)。

おばちゃんがレシート (写真右 → ) に 50 と書いて見せたので、 HK$50 (約 500円) を支払う。 11ポンドなら HK$31.5 + HK$4.5 * (11磅-7磅) = HK$49.5 なので、 HK$50 なら計算も合ってる。

するとおばちゃん曰く 「とだい」。
む? 一瞬何を言ったか分からず固まってしまったが、 「Today」 らしい。 私に広東語が通じないんで英語に切り替えてくれたらしい。 でも、 おばちゃんが喋れる英語はここまで。 どうやら 「今日できるよ」、 と言いたいらしい。 どんな仕上がりで返ってくるか一抹の不安を感じたが、 まあ、 なるようになるでしょ。 このレシートを受け取って店を出る。 レシートの右上に 「未付款 not yet paid」 と書かれているが、 レシート中央に斜めに赤字のスタンプで 「已付款」 と押してあるので、 既に支払い済という意味なのだろう ( 「」 は 「既に」 という意味の漢字)。 スタンプも英語併記にしておいてくれると助かるのだが。 レシート上で店名の 「Laundromat」 の綴りが間違っているのはご愛嬌。

ホテルに向かうと、 私と同じように大きな袋をぶら下げてホテルを出てくる人を発見。 なんだ、 みんな同じような感じで洗濯物を出していたのか。 なんでいままで気づかなかったんだろう。

その日の晩、 ホテルに戻ってきたら 20:00 を15分ほど過ぎてしまい、 店は既に閉っていた。 営業時間は、 月曜〜土曜が 8:00〜20:00、 祝祭日が 9:00〜17:00 で、 日曜は休み。 ただし冬節 (冬至, 2011年は 12月22日だった) は中国人にとって特別の日であるらしく、 営業時間が (この店に限らず) 変則的なので注意が必要 (営業しないか、開店しても早々に閉店する)。 実は前掲の店の写真は 12月22日、 冬節の朝 10:19 に撮ったものだが、 まだ開店しておらず 「梢候片刻 PLEASE WAIT」 の札がドア中央にかけてある。 両隣の店のシャッターが閉っているのは冬節だからだと思われる。 決してシャッター街になってしまっているわけではない。

洗濯済衣類の袋

次の日 (12/20) の朝、どきどきしながら店へ行ってレシートを (昨日と同じ) おばちゃんに差し出す。 おばちゃんは、店内に積み上げてある袋の中から一つを引き出してカウンターへもってきてくれた (写真右 →)。

ここで 「むごーい」 (「唔該」, 「ありがとう」 の意味) と言えばいいのだろうけど、 つい 「Thank you」 と言ってしまった。 練習を積まないと、 なかなか自然には出てこない。

なにはともあれ、 ここまでは想定通りにコトが進んだ。 スムーズすぎるくらい。 袋をホテルの部屋に持ち帰り、 どんな状態の衣類が出てくるか、 固唾を飲んで袋の口をほどく。

なんと、 シャツや下着が一枚ずつ丁寧に畳んで重ねてあった。 ハンカチもきちんと二つ折りにしてあった (写真下 ↓)。 量り洗いなのに、 ここまで丁寧に畳んでくれるとは。

きちんと畳まれた衣類

しかも洗濯から畳むまで全て込み込みで、 わずか 500円。 ちなみに米国だとコインランドリーを使う料金だけで US$7.0 (約 546円) くらいかかる (おまけに 25セント硬貨で用意しなければならないので大変)。

あとで気付いたが、 レシートに書いてあった伝票番号 11834 が、 袋にも (手書きで) 書いてあった。 店内に積み上げられた袋の中から、 おばちゃんはこの数字を頼りに私の袋を引き出したのだろう。

きちんと畳まれた仕上がりに感動したので、 日本へ帰る直前にもう一度、 この 「新明亮 專業乾洗」 を利用した。 こんどは 「ズタボロにされても構わない」 衣類だけでなく、 旅行中に着た服を全て出した (最初の利用日のわずか 2日後だったが、11ポンドもあった) が、 同様に満足のいく仕上がりだった。 おかげで、 日本に帰ってから洗う必要があった衣服はほとんど無く、 帰宅後に大量の洗濯をする羽目にならずに済んだ。

実は、 帰宅翌日に自宅の洗濯機が故障して往生した (年末だったので年内に配達してもらえる洗濯機、 という条件で選んだら、 日本製は在庫がないということでハイアール製になった。 こうやって日本のメーカはシェアを失っていくのだろう)。 もし、 香港で洗濯していなかったら、 新しい洗濯機が届くまで洗濯物があふれかえって、 もっと悲惨な事態になっていたところだった。 やはり洗濯は旅行中に済ませてしまうに限る。


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